私にとっての『美の基準』
私が真鶴町に暮らし始めて丸2年が過ぎました。そして今回取り上げる本、『美の基準』は引っ越してきた当初からウチにありました。家を建てる際に母が購入したものです。当初はあまり興味が持てず、パラパラとめくるだけで、読み込む事もありませんでした。
ところが実際に町に住み、多くの人と関わり、地域創生の活動にも参加させて頂くようになると、とっても大切で、大事にされているものだと実感。そして他の自治体にはない、希少な存在であることもわかってきました。
最初は「海」きっかけ
思い起こせば、ずいぶん昔から両親は「ゆくゆくは海の見える場所で暮らしたい」と口にしていました。趣味のスノーケルや家族旅行がてら、三浦半島から伊豆のあたりまでの物件を下見し、夢を膨らませているようでした。
当時の私には、老後の終の棲家探しなのか? 野望なのか?「ゆくゆく」の本気度はぜんぜん分からなかったのですが、休日のたびに海の見えるいろいろなところに連れて行ってもらって、楽しかった記憶はあります。
真鶴といえば幼い頃からしょっちゅう、スノーケルをしに通っていた町。自宅から車で1時間弱だったので日帰りでサクッと海遊びするのにちょうど良く、特に琴ヶ浜や山下浜は海が穏やかで透明度が高くて、浅瀬でもカラフルなお魚もたくさんいて大好きでした。
町の「美」を知る
そんな訳で、ほとんど海しか眼中になく引っ越してきた我が家。背戸道も道祖神も知りません。町並みもほとんど目にすることなく、海まで車で素通りしてきたのです。近年の真鶴移住者の中ではかなりのレアケースでしょう。
さて、本題の『美の基準』とは、今から約30年程前のバブル期に、近隣地域まで大きなマンションやホテル建設など大規模なリゾート開発の波が押し寄せてきたことを背景に、制定されたデザインコードになります。
町民の中では開発に賛成と反対、両方の意見があったそうですが、「この景観を守る!」方向に舵を切り、町民の共通の思いを一冊の本にまとめて条例に制定。無闇な開発を阻止してきた歴史があります。
だけど、決まり事を連ねたよくある条例とも違うのです。まずは1ページ目、「本デザインコード(美の基準)は、町、町の人々、町を訪れる人々、町で開発をしようとする人々がそれぞれに考え、実行していくべき小さなことがらを一つひとつ綴っています。」と始まります。
『美の基準』が伝えるもの
もともとあった真鶴の美しさを8つの基準に分類。69項目に分かりやすくまとめてあり、写真やイラストもふんだんに盛り込まれています。なんとなく「いいなぁ」「大事だなぁ」と思っていることが言語化されて町民の共通認識となっているのだと思います。
「実のなる木を見てうれしくない人はいない」だとか「人が懐かしいと考えるものは「古いもの」とは違う質をもっている」だとか……たしかに!って、町や暮らし方や、自分の生き方をも考えるきっかけになるヒントが詰め込まれているように感じます。