きっかけは「駅からハイキング」
真鶴に住むようになって、この魅力的な町が多くの文学者、作家の方々を惹きつけてきた歴史を知るようになりました。特に先日の記事で参加してみたJR東海の「駅からハイキング」で頂いた冊子、「真鶴歴史探索地図」で、私の興味がグッと昂まりました。
そんな文学作品のひとつひとつを、この「真鶴情報発信サイト」でご紹介していくのも、なんだか「格調高くて良いな……」と思い、私も実際に読んでみることにしました。第一回目に取り上げるのは表題の通り、あの有名な芥川龍之介の『トロッコ』です。
『トロッコ』
国語の教科書でも採用されることがあるそうなので、お読みになっている方も多いかもしれません。私の教科書には載っていませんでした。けどタイトルぐらいは知っています。今は著作権も切れて、こちらの「青空文庫」でも無料で読めます。ご興味がある方はどうぞ!
芥川龍之介の短編といえば「蜘蛛の糸」や「鼻」のように、教訓めいた寓話なのかな……と思って読み始めたのですが、ぜんぜんそんなことはありませんでした。幼少の頃のちょっとした冒険譚(?)を、淡々と綴ったような作品で、大ドンデン返しのような展開もオチも、何もありません。
しかし「名作」と名高いだけあって、文章力はスゴい! 今だったら電車の運転手に憧れるような子どものワクワク感や、慣性の法則まで伝わってくるトロッコの描写……今これを書いている私の文章力に恥じ入りたくなるぐらいの名文です!
トロッコと真鶴
それでは作品と真鶴の関係性を読み解いてみましょう。まず物語の冒頭で説明される設定は、「小田原〜熱海の間で軽便鉄道の工事が始まった年」とされています。調べてみると1907年(明治40年)のことになるそうです。それ以前は、人力により客車を押したことで有名な「豆相(ずそう)人車鉄道」が通っていた区間です。
その工事に使うトロッコに憧れて、当時8歳だった主人公「良平くん」が、冒険(?)に繰り出します。右手に海を見ながら「蜜柑畑の山」を登ったり下ったり……自分の家から「岩村」を超え、その3〜4倍は遠くまで来てしまったということです。ちょうど真鶴あたりの密柑山がメインの舞台だと言えるかも?
文章全体に散りばめられた情報から、私は「湯河原に自宅があって、根府川あたりまでの冒険だったのかな?」と予測を立てましたが、さすが芥川の名作です。すでに研究者の人たちが分析し尽くしていて、「湯河原町の吉浜を出発して、江の浦あたりまでの冒険だった」という考察が、ネットでいくつも見つかりました。
私の感想
自分の町が名だたる文豪の作品になってるなんて、誇り高く感じちゃいますよね。最初に「オチも教訓もない」小説のように書きましたが、かえってその方が味わい深い余韻を残してくれているように感じます。
子どもの頃の真鶴での冒険を、大人になってからも何度も思い出して反芻するのだという……この入れ子構造のような小説の結末が、そのまま今の真鶴を生きる私たちの生活実感にシンクロしているようにさえ思えるのです。