町歩きの一休みに

真鶴町の魅力のひとつ……背戸道。すり鉢状の急斜面に、所狭しと軒を連ねる街並みを縫う小道を、町の人は背戸道と呼んでいます。「真鶴出版」さんをはじめとして、定期的なイベントや学習会でも「町歩きツアー」として人気を集めています。他所のお家の庭先や軒先、ここは通っていいのか?行き止まりなのか?……町全体が迷路になったようなアトラクション!!
夏目漱石の筆によると、明治の頃にはもう石積みの道や階段が組まれていたということですから、私たちがいつも歩いている道がどのくらい古いのか知れません。ただ、大型の工作機械もなかった時代、ひとつひとつ人の手で積まれていった昔に想いを馳せながら歩いていくと、いつの間にか辿り着いた高台に、一軒の小さなお店が佇んでいます。

そのお店の名前は『おむすび こめっと西の坂』……「西の坂」と言われても、昔から真鶴にお住まいの方じゃないとピンと来ないかも知れません。「西の道祖神」から「愛宕神社」の脇の階段と急な坂を上がっていって……と説明しても、それだけでもうRPGのミッションみたいですよね。素直にスマホのMAPアプリをお使いください。
宝探しのように辿りつけば、ここからの景色は格別! 真鶴の町と港がぐるっと見渡せて、遠くには水平線も望めます。おばあちゃんちの縁側を改修したようなデッキの椅子に腰掛けて、小腹が空いた分だけおにぎりをひとつ、ふたつ頬張って……町歩きの一休みにぴったりなご褒美が待っています。

お米から作るおむすび屋さん
ここで握られるおむすびは、なんとお米から作られているのです! 「何をあたりまえのコトを……」とお思いの皆さん。そういう意味ではありません。その意味ではすべてのおむすびが、お米から作られています。ここでは、オーナーの綾子さんが自ら、お米を育てるところから関わられている……という意味になります。

『こめっと』さんで使われるお米は、大井町で無農薬で作られる「はるみ」というお米です。綾子さんは農家の人ではないので、すべてを自分で育てられている訳ではないのですが、「自分のお店で使うお米にはできる限り関わりたい」という想いから、春の田植えから秋の収穫まで何度も水田に足を運ばれて、お世話をしています。
中の具材の方もご覧の通り……おなじみの「梅」や「鮭」から、初めて見るような「炒り卵」「お揚げ」「らぁ油キクラゲ」なんてものまで。いくつかスタンダードな味を確保しつつ、新しい味へのチャレンジを組み合わせて注文すると楽しくなります。開始当時は10数種類の味を開発されたそうですが、だんだん厳選されて今の数に落ち着いたそう……それでも多いですけどね!

真鶴愛の行き着く先
綾子さんがこの場所でお店を開くことになったのは、偶然に偶然が重なって2年前。きっかけは真鶴半島の向かい、海を挟んで反対側に見える三浦半島は油壺の海に惹かれて……。葉山、逗子からぐる〜っと相模湾沿いの物件を探し続けて湯河原の移住相談事業に辿り着き、そこからちょっと戻って真鶴半島へいらっしゃったということです。

真鶴に惹かれた理由は私と同じだったみたいで、近くても湯河原と真鶴ってちょっと違うんですよね……と言うと「そうそう!」とご同意いただきました。前に住んでいたおばあちゃんが手放すことになったこの平家を思い切って購入し、地元の大工さんにリフォームしてもらい、今のお店の形に仕上げられたそうです。

今でも東京との二拠点生活で、真鶴と半々で往復されながら、「地域活性化起業人」としても働いている綾子さん。真鶴への移住促進や古民家の再利用に取り組みつつ、田んぼのお米のお世話もあるので、3足や4足の草鞋(わらじ)になるのかな?『こめっと西の坂』の営業は週末中心の不定期になります。